広報誌【ゆうあい】第93号に御殿場市在住・永井文人さんによる海外レポート(中国・常熟)が掲載されました。
紙面の都合で全文掲載できなかったのですが、とても興味深いレポートを書いていただきましたのでホームページにて全文を掲載いたします。
ぜひご覧ください。
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私が中国に来たのは2019年6月、
会社の人事異動により上海から車で2時間程の常熟という街に勤める事になりました。
まだコロナウイルスという名前自体が世界に広まる半年前の頃です。
当時私は世界の情勢や文化、言語に触れる機会は少なく、時おりテレビやネットで流れる情報を耳にするも、対岸の火事程度に聞き流しそれほど心に留めておく事もないような毎日を過ごし目の前の出来得る所に力を注ぎ日々を過ごしていました。
2019年、京都アニメーションの放火事件や沖縄首里城の消失など暗いニュースもありましたが令和という新たな年号が始まった記念すべき年でもあると言えます。
その6月に中国で仕事をする事になった私の当時の素直な思いは、あくまで仕事に対する情熱と、どれほど自分の経験や知識が役に立つかのみ考えていました。
率直なところ中国に対するイメージは私の中で良いとは言えず、過ごしやすい国とは思えませんでした。先入観や固定観念に囚われず、どのような国なのか自分の目で見たり経験したいと思い、中国での仕事を決意しました。
中国での生活を始めてまず驚いたのは建造物やインフラが整備され、電気自動車が普及し、何よりも携帯一つで生活を送る事が出来る生活基盤が国全体に浸透している事でした。
買い物全ては部屋にいるだけで成立し、飲み物を買う自動販売機ですら顔認証で済ませられ携帯を取り出す手間すらいらない、つまり現金を持ち歩いてる人を探す方が難しい程電子マネーの流通が当たり前になっていました。
食料や品物、ファストフードの配送サービスは日常的で、アプリから店や食べたい物を選択して注文すれば簡単にすぐ家に届けられ、その便利さは衝撃的でした。
食事に関しては流石本場の中国料理!美味しい物で溢れていました。
私の住む地域の郷土料理はどちらかというと甘い味付けの物が多く馴染めませんでしたが、ラーメンや小籠包、水餃子などは格別でした。
新鮮な野菜や肉を唐辛子や八角、花椒と呼ばれる中国山椒の入った鍋に入れて煮込み、並べられた沢山の調味料で自分の好みの「つけダレ」を作って食べる火鍋など毎日外食したくなるほどの美味しさでした。
2019年12月、コロナウイルスが中国国内で広がり始め2020年1月に日本でも発症者が出る事態となりました。
中国国内では小規模の封じ込めが始まり、人の移動制限は勿論近くのスーパーへ買い物に行くことすら制限されるほどの厳しい政策と管理体制を目の当たりにする事となりました。
発症者の居住区は公表されリスク地域が色別に可視化される事によってリスク区分ごと情報共有がされ、WeChat(微信)や支付宝(アリペイ)というアプリ上でリスクに応じて各個人の安全性を示すQRコードがパスポート番号や個人IDと紐付けされて表示される仕組みになっていました。
その為どの店に入るにもQRコードの提示が求められ、高リスク地域に移動歴がある人や、濃厚接触者に認定された人はそのQRコードが赤く表示される為どこの店にも入れません。
幸い私の住んでいた街は低リスク地域で、日本が緊急事態宣言で移動規制や3密で制限されている頃もマスクをせずに街中を自由に歩けるほどウイルスの抑制対策が功を奏していました。
2020年夏頃になると高リスク地域以外は少しずつ移動できるようになりました。
せっかくなので現地の人と現地の言葉で話しをしたかった私は中国語を勉強し、HSK5級合格まで辿り着けました。
現地の方々は「どこから来たのか?」と尋ねてきて日本人だと答えると想像以上に積極的に話しかけてくれました。私が中国語が話せると分かるや否や好きなアニメやドラマの話で盛り上がり、日本に行ってみたいと言ってくれる人がとても多かったのが嬉しかった。
特に若い世代の人達はとても友好的なうえに、日本の文化にも詳しく、私よりも日本での流行や著名人について色々と話してくれました。しかも年齢関係なしに1人の人間として向き合い、遊びや食事などに誘ってくれました。
台湾人、香港人、シンガポール人、そして私の4人で食事した時はもちろん会話は中国語です。私の拙い言葉でも皆理解しようと耳を傾けてくれ、乾杯!乾杯!と、とても充実して楽しい時間を過ごせたことはずっと忘れられない出来事だと改めて思います。
しかしその後上海でのウイルス感染が大きく拡大し、2ヶ月に及ぶ封鎖が始まりました。私もほぼ毎日、PCR検査を行ってから出勤するという日々が続きました。
物流が止まり物資や食料が届かない状態も続きゼロコロナ政策は継続しました。
日本と同様に少子高齢化が進んでいる中国、医療体制を考えると年配者を感染から守る為には感染を広げずに封じ込めようとした事も、方法の一つであっただろうと私個人は考えます。
中国人の家族を大切にする文化や伝統はとても根強く、春節などの祝日を家族で過ごす大切な時間として皆が考えていると知り感慨深いものを感じました。
中国生活で支えてくれた多くの仕事仲間や現地で出会った日本人の方々、友人達と過ごした時間はとても有意義であり、また中国に行く日が来たら一緒に食事を楽しみたいと思います。